「トラウマ」という言葉を聞いて、どう感じますか。
「私の経験は、そこまで大きなものじゃない」
「トラウマっていうのは、もっと深刻な人のこと」
「向き合うって言われても、どうすればいいか分からない」
こんな風に思っていませんか。
あるいは、こんな不安を感じていませんか。
「向き合ったら、もっと辛くなるんじゃないか」
「過去を掘り返すのは怖い」
「今のままでいた方が、まだマシかもしれない」
この記事では、トラウマとは何か、そして「向き合う」とは本当にどういうことなのかについて、一緒に考えていきます。
多くの誤解があります。「向き合う」とは、過去を詳細に思い出すことでも、親を許すことでも、一気に解決することでもありません。
そして、最も大切なこと——あなたの経験は「トラウマ」と呼ぶに値するものです。
「大したことない」と思い込む必要はありません。あなたが感じている痛みは、本物なのです。
トラウマとは何か – 正確な理解
「大きな出来事」だけがトラウマではない
トラウマと聞くと、多くの人はこんなイメージを持ちます。
「戦争体験」「大きな事故」「自然災害」「性的暴行」——確かに、これらは深刻なトラウマです。
しかし、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)では、トラウマをこう定義しています。
「実際のまたは危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事への、直接的または間接的な曝露」
ここで重要なのは、「曝露」という言葉です。一度だけではなく、繰り返し、継続的に——それもトラウマなのです。
そして、子供にとっては、親からの否定的な言葉、無視、過度なコントロール、不安定な家庭環境——これらすべてが、心理的な生命の危機として体験されるのです。
複雑性トラウマという概念
精神科医ジュディス・ハーマンは、「複雑性PTSD(Complex PTSD)」という概念を提唱しました。
これは、一度の大きな出来事ではなく、長期間にわたる繰り返しのトラウマを指します。
特に、逃げることができない状況——子供にとっての家庭がまさにそうです——で起きるトラウマは、より深刻な影響を及ぼします。
毎日、親の顔色を伺う。毎日、否定される。毎日、怯えながら生きる——これが何年も続いたとき、それは確実にトラウマとなります。
しかし、「毎日のこと」だからこそ、本人は「これが普通」だと思い込んでしまいます。「トラウマなんて大げさだ」「他の人に比べれば大したことない」——そう自分に言い聞かせてきたのではないでしょうか。
小児期逆境体験(ACEs)研究が示すこと
1998年、アメリカで画期的な研究が発表されました。フェリッティ博士らによる「小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)研究」です。
この研究では、17,000人以上を対象に、子供時代に経験した以下のような出来事を調査しました。
ACEsの項目:
- 身体的虐待
- 精神的虐待
- 性的虐待
- 身体的ネグレクト
- 精神的ネグレクト
- 親の離婚・別居
- 家庭内暴力の目撃
- 家族の薬物乱用
- 家族の精神疾患
- 家族の投獄
そして、驚くべき結果が出ました。
ACEsスコアが高いほど、成人後の健康問題、精神疾患、依存症、自殺リスクが有意に高くなるのです。
つまり、子供時代の「小さな」傷の積み重ねが、大人になってからの心身の健康に深刻な影響を与えることが、科学的に証明されたのです。
あなたの経験は、「大したことない」ものではありません。それは、確実にあなたに影響を与えてきたのです。
トラウマは「記憶」ではなく「身体の反応」
神経科学者ベッセル・ヴァン・デア・コークは、著書『身体はトラウマを記録する』の中で、重要な指摘をしています。
トラウマは、「思い出」として脳に保存されるのではなく、「身体の反応」として刻み込まれる
通常の記憶は、前頭前皮質と海馬によって処理され、「過去の出来事」として整理されます。時間が経てば、感情的な強度も薄れていきます。
しかしトラウマは違います。
強い恐怖や無力感を伴う体験は、扁桃体(脳の危険察知センター)に直接刻み込まれます。そして、似たような状況に遭遇したとき、扁桃体が自動的に反応し、当時と同じ身体反応を引き起こすのです。
だから、「もう昔のことなのに」「頭では分かっているのに」——身体が勝手に反応してしまうのです。
これは、あなたが弱いからでも、考えすぎだからでもありません。トラウマの生理学的なメカニズムなのです。
あなたが感じている「これ」がトラウマの表れ
「自分の経験は大したことない」と思っていた方も、実は日常的にトラウマの症状を経験している可能性があります。
以下のような症状に、心当たりはありませんか。
身体症状 – 体が記憶している
原因不明の身体の不調
- 慢性的な頭痛、肩こり、腰痛
- 胃腸の不調(過敏性腸症候群など)
- 原因不明の疲労感
- 睡眠障害(寝付けない、悪夢を見る、途中で目が覚める)
過敏な身体反応
- 大きな音にびくっとする
- 突然触られると飛び上がる
- 心臓がドキドキして止まらない
- 呼吸が浅くなる
これらは、前回の記事で説明した「扁桃体の過敏化」の結果です。あなたの身体は、常に「危険モード」になっているのです。
【Aさん(32歳・女性)の場合】
「病院で検査しても、異常なしと言われます。でも、毎朝起きると体が重くて、動けません。頭痛もひどい。『気のせいじゃないの』と言われることもあります。でも、気のせいじゃないんです。本当に辛いんです」
Aさんの症状は、幼少期から続く慢性的なストレスによるものでした。家では常に緊張していた。親の機嫌を伺い、怒られないように気をつけていた。その状態が20年以上続いた結果、身体が悲鳴を上げているのです。
心理症状 – 心が記憶している
侵入的な記憶(フラッシュバック)
フラッシュバックというと、映画のように過去のシーンが鮮明に蘇ることをイメージするかもしれません。しかし、多くの場合はもっと微細です。
- ふとした瞬間に、親の怒った顔が浮かぶ
- 親の声のトーンが頭の中で聞こえる
- 子供の頃の感覚(恐怖、無力感)が急に湧いてくる
これらも、フラッシュバックの一種なのです。
過覚醒 – 常に警戒している
- 人の顔色を常に伺ってしまう
- 些細なことでも「何か悪いことが起きるのでは」と不安になる
- リラックスできない
- 常に何かに備えている感じ
前回の記事で述べた「3倍のエネルギー消費」——これも、過覚醒の結果です。あなたの脳は、常に戦闘態勢なのです。
回避行動 – 思い出したくない
- 実家に帰るのを避ける
- 親からの連絡を見たくない
- 子供時代の話題を避ける
- 感情を感じないようにする
これは、防衛機制の一つです。辛い記憶や感情から自分を守るために、無意識に避けているのです。
感情の麻痺 – 何も感じない
- 喜びも悲しみも、あまり感じない
- 「今、何を感じているか」と聞かれても分からない
- 人生が「灰色」に見える
- 他人の感情にも共感しにくい
これも、防衛機制です。感じすぎると辛いから、感じないように脳がブロックしているのです。
【Bさん(29歳・男性)の場合】
「友達が結婚して、すごく幸せそうです。でも、僕は何も感じません。嬉しいはずなのに。悲しいこともあったけど、涙も出ない。感情がないみたいです」
Bさんは、幼少期から感情を抑圧することで生き延びてきました。親に感情を出すと否定されたからです。その結果、大人になった今も、感情にアクセスできなくなっているのです。
対人関係の症状 – 関係が記憶している
親密さへの恐れ
- 人と深い関係を築けない
- 本当の自分を見せられない
- 相手が近づいてくると、逃げたくなる
信頼の困難
- 誰も信用できない
- 「いつか裏切られる」と思ってしまう
- 助けを求められない
境界線の問題
- NOと言えない
- 相手の問題を自分の問題として抱え込む
- または逆に、冷淡になりすぎる
これらは、前回の記事で述べた「愛着スタイル」の問題です。親との関係で形成された対人関係のパターンが、今も続いているのです。
【Cさん(34歳・女性)の場合】
「彼氏ができても、長続きしません。最初は良いんです。でも、相手が『愛してる』と言ってくれても、信じられない。『どうせいつか嫌われる』と思って、自分から距離を置いてしまいます」
Cさんは、親から一貫した愛情を受けられませんでした。ある時は優しく、ある時は冷たい。この不一致が、「人は信用できない」という信念を形成したのです。
これらすべてが、トラウマの表れ
もしあなたが、上記のような症状を複数経験しているなら——それは、トラウマの影響なのです。
「自分は神経質なだけ」「考えすぎなだけ」「性格の問題」——そう思い込む必要はありません。
あなたの身体と心は、過去の傷を記憶しているのです。
「向き合う」の誤解を解く
さて、ここまで読んで、「やっぱり自分にもトラウマがあるんだ」と気づいたかもしれません。
そして同時に、こう思ったかもしれません。
「じゃあ、どうすればいいの?」
「向き合うって、具体的に何をするの?」
「向き合ったら、もっと辛くなるんじゃないか?」
ここで、最も大切なことをお伝えします。
「向き合う」ことについて、多くの誤解があります。
その誤解を解くことが、回復への第一歩なのです。
よくある誤解
❌ 誤解1: 「過去を詳細に思い出さなければならない」
多くの人が、トラウマと向き合うとは、過去の辛い出来事を一つ一つ詳細に思い出し、語らなければならないと思っています。
でも、それは違います。
⭕ 真実: 思い出すことが目的ではない。安全に感じられることが目的
トラウマ治療の第一人者であるベッセル・ヴァン・デア・コークは、こう述べています。
「トラウマの治療は、過去を変えることではない。過去との関係を変えることだ」
つまり、詳細に思い出す必要はないのです。むしろ、無理に思い出そうとすることは、トラウマの再体験(リトラウマタイゼーション)を引き起こし、逆効果になることもあります。
大切なのは、「あの頃は辛かった」と認めること。そして、「でも今、私は安全だ」と感じられるようになることなのです。
❌ 誤解2: 「親を許さなければならない」
「トラウマを乗り越える」というと、「親を許すこと」だと思われがちです。
でも、それは必須ではありません。
⭕ 真実: 許しは必須ではない。自分を解放することが目的
許すかどうかは、あなたが決めることです。許せないなら、許さなくていい。
重要なのは、親への怒りや恨みに支配されないことです。
「親を許さないと、自分が前に進めない」——これも誤解です。親を許さなくても、あなたは前に進めます。
必要なのは、親の影響から自分を解放することです。親がどうであれ、自分の人生を生きること。それが目的なのです。
❌ 誤解3: 「すべてを語らなければならない」
カウンセリングやセラピーでは、すべてを話さなければならないと思っていませんか。
でも、それは違います。
⭕ 真実: 語りたいことだけでいい。沈黙も尊重される
トラウマインフォームドケアの原則の一つは、「選択とコントロール」です。
あなたが話したくないことは、話さなくていい。あなたが触れたくない記憶は、触れなくていい。
専門家は、あなたを無理に話させようとはしません。あなたのペースを尊重します。
沈黙も、一つのコミュニケーションです。語れないことがあっても、それで構わないのです。
❌ 誤解4: 「向き合えば一気に解決する」
「トラウマと向き合えば、すぐに良くなる」——そう期待していませんか。
でも、現実は違います。
⭕ 真実: プロセスには時間がかかる。それが正常
トラウマの回復は、一直線には進みません。
良くなったり、悪くなったり。2歩進んで1歩下がる。それが普通のプロセスなのです。
ジュディス・ハーマンは、トラウマ回復には「数ヶ月から数年」かかると述べています。
焦らないでください。時間がかかることは、あなたが弱いからではありません。それが、トラウマの性質なのです。
「向き合う」の本当の意味
では、「向き合う」とは、本当にどういうことなのでしょうか。
それは、以下の4つのことです。
1. 気づくこと
「これがトラウマの影響だ」と認識する
「なぜか分からないけど、人の顔色を伺ってしまう」——それは性格ではなく、トラウマの影響だと気づくこと。
「なぜか分からないけど、身体が反応してしまう」——それは、過去の記憶が身体に刻まれているからだと理解すること。
気づくだけで、自分を責めなくなります。「私が変なんじゃなかった。理由があったんだ」——そう理解できるのです。
2. 安全を確保すること
今、あなたは安全であることを確認する
トラウマ回復の第一段階は、「安全の確立」です。これについては、後ほど詳しく説明します。
物理的な安全——親と適切な距離を取る。心理的な安全——自分を責めない。関係的な安全——信頼できる人を見つける。
安全が確保されていない状態で、トラウマと向き合うことはできません。まず、安全を。
3. 感情を許可すること
怒り、悲しみ、恐怖を感じていい
「感じること」は悪いことではありません。
怒ってもいい。泣いてもいい。怖がってもいい。
あなたは、長い間、感情を抑圧してきたのかもしれません。「感じてはいけない」「弱音を吐いてはいけない」——そう教えられてきたのかもしれません。
でも、感情は自然なものです。感じることを、自分に許可してください。
4. 新しい経験を積むこと
安全な関係を経験する
トラウマは、「人は危険だ」という信念を作ります。
その信念を変えるには、安全な関係を実際に経験することが必要です。
信頼できる友人、共感的なカウンセラー、理解あるパートナー——こうした人々との関係を通じて、「人は時に安全だ」と学び直すのです。
これは、頭で理解するのではなく、身体で経験することが重要なのです。
回復のプロセス – 3つの段階
ジュディス・ハーマンは、トラウマ回復を3つの段階に分けました。
この枠組みは、現在も多くの専門家に支持されています。そして、重要なのは、これらの段階を順番に進む必要があるということです。
飛ばしてはいけません。特に、第1段階の「安全の確立」は絶対に必要なのです。
第1段階: 安全の確立
これが、最も重要な段階です。
安全がなければ、回復は始まりません。
トラウマを負った人の脳は、常に「危険モード」になっています。扁桃体が過敏化し、身体は戦闘態勢です。
この状態では、過去と向き合うことはできません。まず、「今、私は安全だ」と脳に教える必要があるのです。
安全の4つの側面
1. 物理的安全
- 危険な状況から離れる
- 親と適切な距離を取る(必要なら疎遠・絶縁)
- 安全な住環境を確保する
- 虐待的な人間関係から離れる
まだ親と同居している、または頻繁に接触しているなら、まずそこから変える必要があります。
「でも、親を見捨てられない」「親が可哀想」——そう思うかもしれません。でも、あなたの安全が最優先です。
次のカテゴリー「問題の切り分け」で詳しく説明しますが、親の問題は親の問題です。あなたが責任を負う必要はありません。
2. 心理的安全
- 自分を責めない
- 「自分が悪かった」という思い込みを手放す
- トラウマ反応を「異常」ではなく「正常な反応」として受け入れる
これが最も難しいかもしれません。長年、「自分が悪い」と思い込んできたのですから。
でも、繰り返しますが——あなたは悪くありません。
子供だったあなたは、生き延びるために最善を尽くしていました。今、そのパターンが合わなくなっているだけなのです。
3. 関係的安全
- 信頼できる人を見つける
- サポートシステムを構築する
- 共感的な友人、カウンセラー、支援グループ
一人で抱え込まないでください。
トラウマからの回復には、安全な人間関係が不可欠です。一人では、回復は困難なのです。
「でも、誰を信頼すればいいか分からない」——そう思うかもしれません。
少しずつ、試してみてください。最初は小さなことを話す。相手の反応を見る。安全だと感じたら、少し深いことを話す——そうやって、徐々に信頼を築いていくのです。
4. 身体的安全
- 基本的なセルフケア(睡眠、食事、運動)
- 身体のシグナルに注意を払う
- リラクゼーションの技法を学ぶ
トラウマを負った人は、しばしば身体のケアを怠ります。「自分は大切にされる価値がない」と思い込んでいるからです。
でも、あなたの身体は、ずっとあなたを支えてきました。その身体を、大切にしてください。
十分な睡眠を取る。栄養のある食事をする。少しでも身体を動かす——これらは、回復の土台なのです。
第1段階にかかる時間
この段階だけで、数ヶ月から1年以上かかることもあります。
焦らないでください。安全を確立することが、すべての基盤なのです。
次のカテゴリー「問題の切り分け」では、この第1段階を実践する方法を詳しく学んでいきます。
第2段階: 記憶と喪失の受容
安全が確立されたら、次の段階に進みます。
ここで初めて、過去の経験と向き合うのです。
何が起きたのか、整理する
トラウマ記憶は、断片化しています。時系列がバラバラだったり、詳細が曖昧だったり。
この段階では、その断片を少しずつ統合していきます。
「あの時、こういうことがあった」
「あの時、私はこう感じていた」
「そして、こうやって生き延びた」
ストーリーとして整理することで、記憶は「過去の出来事」として脳に保存され直されます。
失われたものを悼む
そして、この段階では、喪失を受け入れることも重要です。
あなたは、多くのものを失いました。
- 普通の子供時代
- 無条件の愛情
- 安全感
- 自己肯定感
これらは、取り戻せません。過去は変えられないのです。
その喪失を、悼んでください。悲しんでください。怒ってください。
「こうあるべきだった」という理想を手放し、「でも、こうだった」という現実を受け入れる——それが、この段階の課題です。
感情を安全に表現する
この段階では、抑圧していた感情が噴き出すことがあります。
怒り、悲しみ、恐怖——それらを、安全な環境で表現することが重要です。
ここで「安全な環境」がなぜ必要か、分かりますか。
感情の洪水に一人で対処することは、トラウマの再体験になる可能性があります。だから、専門家のサポートがあった方が安全なのです。
重要な注意
この段階は、専門家のサポートがあった方が安全です。
一人で無理に進める必要はありません。トラウマの再体験にならないよう、慎重に。
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)、ソマティック・エクスペリエンシング、トラウマフォーカスト認知行動療法——こうした専門的な技法があります。
後ほど、専門家の選び方についても説明します。
第3段階: 人生との再接続
最後の段階——ここで、あなたは新しい人生を築き始めます。
新しい人間関係を築く
トラウマによって失われた、または歪められた人間関係のパターンを、新しいものに書き換えます。
- 健全な境界線を学ぶ
- 相互的な関係を経験する
- 親密さを恐れずに受け入れる
これについては、次のカテゴリー「問題の切り分け」や、「生きづらさ解決」カテゴリーで詳しく学んでいきます。
自分の価値観を見つける
今まで、親の価値観に支配されていたかもしれません。
「こうあるべき」「これが正しい」——親の声が、あなたの頭の中で響いていたかもしれません。
この段階では、あなた自身の価値観を見つけます。
「私にとって、何が大切なのか」
「私は、どう生きたいのか」
「私の人生の意味は、何なのか」
これらの問いに、あなた自身の答えを見つけるのです。
人生の意味を再構築する
トラウマによって、人生が無意味に感じられていたかもしれません。
「こんな辛い思いをして、何の意味があるのか」
「なぜ、私がこんな目に遭わなければならなかったのか」
この段階では、その問いに対するあなた自身の答えを見つけます。
必ずしも「意味があった」と思う必要はありません。でも、「この経験を通じて、私は何を学んだのか」「これからの人生に、どう活かせるのか」——そう問い直すことができます。
未来に希望を持つ
そして最後に——未来に希望を持つことができるようになります。
「過去は変えられない。でも、未来は自分で創れる」
この実感が、回復の最終段階なのです。
「治る」のではなく「成長する」
ここまで読んで、こう思ったかもしれません。
「じゃあ、トラウマは『治る』のか?」
この問いに対する答えは——「治る」という表現は適切ではないのです。
トラウマは「病気」ではない
トラウマは、病気ではありません。
それは、過酷な状況に対する正常な反応です。
あなたの脳と身体は、生き延びるために必死に適応しました。その結果が、今の症状なのです。
だから、「治す」という表現よりも、「回復する」「成長する」という表現の方が適切なのです。
「元に戻る」のではなく「前に進む」
「トラウマがなかった頃の自分に戻りたい」——そう思うかもしれません。
でも、考えてみてください。トラウマがなかった頃とは、いつでしょうか。
多くの場合、トラウマは幼少期から始まっています。つまり、「トラウマがない自分」を、あなたは知らないのです。
だから、目指すのは「元に戻る」ことではなく、「新しい自分になる」ことなのです。
トラウマの経験を含めた、今のあなた。その上で、前に進む。新しい人生を築く。
それが、回復のゴールなのです。
心的外傷後成長(PTG)という希望
心理学者テデスキとカルホーンは、「心的外傷後成長(Post-Traumatic Growth: PTG)」という概念を提唱しました。
これは、トラウマ体験の後に、むしろ以前よりも成長するという現象です。
「トラウマのおかげで良かった」という意味ではありません。トラウマは決して「良いこと」ではありません。
でも、トラウマを経験し、それと向き合うプロセスを通じて、人は成長することができる——それが、PTGの考え方なのです。
PTGの5つの領域
研究によれば、トラウマから回復した人々は、以下の5つの領域で成長を報告しています。
1. 人間関係の深まり
トラウマを経験したからこそ、人の痛みが分かるようになった。
表面的な関係ではなく、深い関係を求めるようになった。
本当に大切な人が誰か、見えるようになった。
2. 新しい可能性の発見
「こうあるべき」という思い込みから解放された。
「こんな生き方もあるんだ」と、新しい道を見つけた。
挑戦する勇気を得た。
3. 人生に対する感謝
当たり前だと思っていたことが、実は貴重だと気づいた。
小さな幸せに気づけるようになった。
生きていること自体に、感謝できるようになった。
4. 精神的な成長
人生の意味について、深く考えるようになった。
自分の価値観が明確になった。
何が本当に大切か、分かるようになった。
5. 内面的な強さ
「あれを乗り越えた自分なら、これも乗り越えられる」と思えるようになった。
困難に対する耐性が強くなった。
自分を信じられるようになった。
具体例
【Dさん(33歳・女性)の場合】
Dさんは、上司の足音に反応してしまう症状に悩んでいました。カウンセリングを受け、2年かけてトラウマと向き合いました。
「完全に『治った』わけではありません。今でも、突然の足音にはドキッとすることがあります。
でも、変わったことがあります。
以前は、『こんな反応をする自分はおかしい』と思っていました。今は、『ああ、身体が反応しているな』と客観的に見られるようになりました。
そして、人の痛みが分かるようになりました。同じように苦しんでいる人を見ると、放っておけません。
『もしかしたら、この経験は無駄じゃなかったのかも』——最近、そう思えるようになってきました」
Dさんの言葉が示すように、トラウマから回復するとは、「なかったことにする」ことではありません。
経験を統合し、その上で新しい自分を築くことなのです。
すべての人がPTGを経験するわけではない
ただし、重要な注意があります。
すべてのトラウマ体験者がPTGを経験するわけではありません。
そして、PTGを経験しなくても、それは「回復していない」という意味ではありません。
回復の形は、人それぞれです。あなたのペースで、あなたの形で——それでいいのです。
サポートを得る – 一人で抱え込まない
ここまで、トラウマと向き合うプロセスについて説明してきました。
そして、繰り返しお伝えしてきたこと——一人で抱え込まないでください。
トラウマからの回復には、サポートが必要です。それは必ずしも専門家である必要はありません。
なぜサポートが必要なのか
トラウマは、孤立の中で深まります。「誰にも言えない」「誰も分かってくれない」——その孤独が、傷をさらに深くするのです。
逆に、安全な人とのつながりは、回復の力になります。
サポートには、様々な形があります:
- 専門家のサポート(カウンセラー、心理士、精神科医)
- 同じ経験をした仲間のサポート(自助グループ、ピアサポート)
- 信頼できる友人のサポート
- 理解ある家族のサポート(親以外の親族など)
どの形が良いかは、人それぞれです。複数のサポートを組み合わせることも有効です。
専門家のサポート
専門家のサポートには、独自の利点があります。
1. 安全に向き合うため
トラウマ記憶を扱うことは、リスクを伴います。
間違った方法で向き合うと、トラウマの再体験(リトラウマタイゼーション)を引き起こし、状態が悪化することもあります。
専門家は、あなたを安全に導く方法を知っています。
2. 客観的な視点を得るため
自分一人では、気づけないパターンがあります。
専門家は、あなたの話を聞きながら、そのパターンを指摘してくれます。
「あなたは今、自分を責めていますね」
「それは、親の声ではありませんか」
こうした気づきが、変化のきっかけになるのです。
3. 専門的な技法があるため
トラウマ治療には、科学的に効果が実証された技法があります。
これらは、専門的な訓練を受けた人だけが提供できます。
同じ経験をした仲間のサポート
専門家以外にも、強力なサポート源があります。
同じ経験をした人々——特に、機能不全家族で育ち、自分の感情と向き合い、トラウマを乗り越えた人、またはうまく付き合えるようになった人です。
なぜ仲間のサポートが力になるのか
1. 「分かってもらえる」という実感
どんなに優秀な専門家でも、経験していないことは、完全には分かりません。
でも、同じ経験をした人は、説明しなくても分かってくれます。
「親の顔色を伺う」「NOと言えない」「自分を責めてしまう」——こうした感覚を、言葉にしなくても理解してくれる人がいる。
それだけで、孤独が和らぎます。
2. 「回復は可能だ」という希望
トラウマと向き合い、乗り越えた人の存在は、生きた希望です。
「あの人も同じような経験をしていた。でも、今はこんなに元気だ」
その姿を見ることで、「自分にもできるかもしれない」と思えるのです。
3. 実践的なアドバイス
実際に回復の道を歩んだ人は、具体的なアドバイスを持っています。
「こういう時は、こうしたら楽になった」
「この考え方が、私には効いた」
「この本が、役に立った」
こうした実践的な知恵は、専門的な知識とは別の価値があります。
4. 安全な「実験場」
トラウマ育ちの人にとって、健全な人間関係を経験することが重要です。
同じ経験をした仲間との関係は、その「実験場」になります。
お互いに境界線を尊重し合う。本音を言い合える。時には対立しても、話し合いで解決する——こうした経験が、「人間関係はこういうものなんだ」と学び直す機会になるのです。
仲間のサポートを見つける方法
1. 自助グループ
アダルトチルドレン(AC)の自助グループなど、同じ経験を持つ人々が集まる場があります。
代表的なもの:
- ACA(Adult Children of Alcoholics/Dysfunctional Families)
- 各地の自助グループ
2. オンラインコミュニティ
SNSやオンライン掲示板にも、毒親育ちの人々のコミュニティがあります。
匿名で参加できるため、最初の一歩として利用しやすいかもしれません。
ただし、情報の質にはばらつきがあるため、見極めが必要です。
3. 回復プログラムの参加者
カウンセリングルームや支援団体が開催する、グループセラピーやワークショップ。
専門家のファシリテートのもとで、仲間と出会えます。
注意点
仲間のサポートには、注意も必要です。
共依存にならない
お互いに依存し合う関係にならないよう、適切な距離感を保つことが大切です。
「傷の舐め合い」にならない
愚痴を言い合うだけで終わらず、前に進むためのサポートであることを意識します。
専門家のサポートと組み合わせる
深刻な症状がある場合は、仲間のサポートだけでなく、専門家のサポートも併用することが重要です。
信頼できる友人のサポート
本当に気を許せる友人も、重要なサポート源になります。
どんな友人がサポートになるか
すべての友人が、トラウマのサポートに適しているわけではありません。
以下のような特徴を持つ友人が、良いサポート源になります。
1. 評価せずに聞いてくれる
「それは考えすぎだよ」「親を責めるのは良くない」——こうした評価をせず、ただ聞いてくれる人。
2. 秘密を守ってくれる
あなたが話したことを、他人に漏らさない信頼できる人。
3. 境界線を尊重してくれる
「話したくない」と言ったとき、無理に聞こうとしない人。あなたのペースを尊重してくれる人。
4. アドバイスを押し付けない
「こうすべき」と押し付けず、あなたの選択を尊重してくれる人。
5. 自分の問題と区別できる
あなたの問題を、自分の問題として抱え込まない人。適切な距離感を保てる人。
友人に何を求めるか
友人は専門家ではありません。だから、求めすぎないことも大切です。
友人に求められること:
- 話を聞いてくれること
- 共感してくれること
- 一緒にいてくれること
- 日常の楽しい時間を共有すること
友人に求めるべきでないこと:
- 治療やセラピー
- 24時間いつでも対応すること
- 問題を解決すること
友人にできることとできないことを理解し、適切に頼ることが大切です。
友人に話すときの心構え
少しずつ話す
最初から全てを話す必要はありません。少しずつ、相手の反応を見ながら話します。
相手の負担を考える
重い話ばかりでは、相手も疲れてしまいます。楽しい時間も共有しましょう。
一方的にならない
相手の話も聞く。双方向の関係を保つことが大切です。
感謝を伝える
話を聞いてくれたことに、感謝を伝えます。「話を聞いてくれて、ありがとう」——その一言が、関係を健全に保ちます。
【Eさん(31歳・女性)の場合】
「長年の友人に、初めて親のことを話しました。すごく怖かったです。『変だと思われるんじゃないか』『引かれるんじゃないか』と。
でも、友人は静かに聞いてくれました。評価せず、ただ聞いてくれました。
そして最後に、『話してくれてありがとう。辛かったね』と言ってくれました。
それだけで、心が軽くなりました。
その後も、私が話したいときに聞いてくれるし、話したくないときは無理に聞こうとしません。適切な距離感を保ってくれます。
専門家のカウンセリングも受けていますが、日常的に話を聞いてくれる友人の存在は、本当に大きいです」
複数のサポート源を持つ
理想的なのは、複数のサポート源を持つことです。
- 専門家:深いトラウマの処理、専門的な技法
- 仲間:共感、実践的なアドバイス、希望
- 友人:日常的な支え、楽しい時間の共有
それぞれに役割があり、組み合わせることで、より安定した回復が可能になります。
一つのサポート源に依存しすぎないことも、健全な関係を保つために重要です。
「助けを求める」ことは強さの証
最後に、もう一度お伝えします。
助けを求めることは、弱さではありません。
それは、自分を大切にするという選択です。自分の回復を真剣に考えているという証です。
「一人で何とかしなきゃ」——その思い込みを、手放してください。
専門家でも、仲間でも、友人でも——あなたは、助けを求めていいのです。
そして、適切なサポートを得ることで、一人では到達できなかった回復に、たどり着くことができるのです。
トラウマ治療の主な技法
専門家のサポートを選ぶ場合、以下のような技法があります。
1. EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)
フランシーン・シャピロが開発した技法です。
眼球運動(または他の両側性刺激)を使いながら、トラウマ記憶を処理します。
多くの研究で、PTSDに対する効果が実証されています。
2. ソマティック・エクスペリエンシング(SE)
ピーター・ラヴィーンが開発した技法です。
トラウマは身体に記録されているという考えに基づき、身体感覚を通じてトラウマを解放します。
言葉で語ることが難しいトラウマにも有効です。
3. トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)
認知行動療法をベースに、トラウマに特化した技法です。
思考パターンを変え、トラウマ記憶を処理し、対処スキルを身につけます。
特に子供時代のトラウマに効果的です。
4. 内的家族システム療法(IFS)
リチャード・シュワルツが開発した技法です。
心の中の様々な「部分(パーツ)」と対話し、統合していきます。
複雑性トラウマに特に有効とされています。
専門家を選ぶポイント
専門家のサポートを受ける場合、以下のポイントをチェックしてください。
1. トラウマ治療の専門訓練を受けているか
- EMDR、SE、TF-CBTなどの認定資格を持っているか
- トラウマインフォームドケアの理解があるか
- 複雑性トラウマの経験があるか
2. あなたを尊重してくれるか
- 話したくないことを無理に聞こうとしないか
- あなたのペースを尊重してくれるか
- 「こうすべき」と押し付けないか
3. 安全を最優先しているか
- 第1段階(安全の確立)を飛ばさないか
- リトラウマタイゼーションのリスクを理解しているか
- 必要なら他の専門家と連携するか
4. 相性が良いか
これも重要です。
どんなに優秀な専門家でも、相性が合わなければ効果は半減します。
「この人となら、安心して話せる」——そう感じられることが大切なのです。
最初の数回で、相性を確認してください。合わないと感じたら、他の専門家を探すことも検討してください。
専門家を見つける方法
1. 精神科・心療内科
医療機関では、薬物療法と心理療法を組み合わせることができます。
重度のPTSD症状がある場合は、医療機関が適切です。
2. 臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルームや心理相談室で、心理療法を受けられます。
「トラウマ専門」を掲げているところを探してください。
3. トラウマ治療の専門機関
EMDR協会、SE Japan、国際トラウマティック・ストレス学会(ISTSS)などのウェブサイトで、認定セラピストを検索できます。
4. 自治体の相談窓口
まず無料の相談窓口で話を聞いてもらい、適切な専門家を紹介してもらうこともできます。
費用について
カウンセリングや心理療法は、残念ながら多くの場合、保険適用外です。
1回あたり5,000円〜15,000円程度かかることが多いです。
経済的に厳しい場合は、自治体の無料相談や、低額で利用できる機関を探してください。
大学の心理相談室は、比較的低額で質の高いサービスを提供していることがあります。
また、すぐに専門家のサポートが難しい場合は、まず仲間のサポートや友人のサポートから始めることもできます。自助グループの多くは無料または低額で参加できます。
まとめ
長い記事を、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
最後に、要点を整理しましょう。
トラウマとは
- 「大きな出来事」だけがトラウマではない
- 繰り返しの「小さな」傷もトラウマになる(複雑性トラウマ)
- トラウマは「記憶」ではなく「身体の反応」として刻まれる
- あなたの日常的な症状は、トラウマの表れかもしれない
「向き合う」の誤解を解く
❌ 誤解:
- 過去を詳細に思い出さなければならない
- 親を許さなければならない
- すべてを語らなければならない
- 向き合えば一気に解決する
⭕ 真実:
- 安全に感じられることが目的
- 許しは必須ではない
- 語りたいことだけでいい
- プロセスには時間がかかる
回復の3つの段階
第1段階: 安全の確立
- 物理的、心理的、関係的、身体的安全を確保
- この段階が最も重要
第2段階: 記憶と喪失の受容
- 何が起きたのか整理する
- 失われたものを悼む
- 感情を安全に表現する
第3段階: 人生との再接続
- 新しい人間関係を築く
- 自分の価値観を見つける
- 未来に希望を持つ
「治る」より「成長する」
- トラウマは「病気」ではない
- 「元に戻る」のではなく「前に進む」
- 心的外傷後成長(PTG)という希望がある
- 回復の形は人それぞれ
専門家の助けを借りる
- 一人で抱え込まない
- サポートには様々な形がある
- 専門家(カウンセラー、心理士、精神科医)
- 同じ経験をした仲間(自助グループ、ピアサポート)
- 信頼できる友人
- 理解ある家族(親以外の親族)
- 複数のサポート源を組み合わせることが効果的
- 助けを求めることは強さの証
あなたへのメッセージ
トラウマと向き合うことは、勇気のいることです。
読んでいて、辛くなったかもしれません。「自分には無理だ」と思ったかもしれません。
でも、覚えておいてください。
あなたは、すでに最も困難なことを乗り越えてきました。
子供の頃、あの家で生き延びたこと——それが、何よりの証です。
あの時のあなたは、持てる力のすべてを使って、生き延びました。
その強さは、今もあなたの中にあります。
そして今、あなたには選択肢があります。
あの時はなかった、「助けを求める」という選択肢が。
一人で抱え込まなくていい。専門家の力を借りていい。仲間を見つけていい。
あなたは一人ではありません。
トラウマと向き合う道は、険しいかもしれません。でも、その先には——
新しい自分。新しい人生。新しい可能性。
それらが、待っています。
焦らなくていい。あなたのペースで。一歩ずつ。
あなたは、回復する力を持っています。
そのことを、信じてください。
次回予告
今回、トラウマと向き合うことについて学びました。
特に重要だったのは、回復の第1段階である「安全の確立」でした。
では、この「安全の確立」を、具体的にどう実践すればいいのでしょうか。
次回からは、「問題の切り分け」カテゴリーに入ります。
最初の記事は、「『親の問題』と『自分の問題』を分ける方法」です。
- 何が親の責任で、何があなたの責任なのか
- なぜ境界線を引くことが「安全の確立」につながるのか
- 罪悪感にどう対処するか
- 具体的な境界線の引き方
これらについて、詳しく学んでいきます。
「これは私のせいじゃなかった」
そう気づくことが、癒しの始まりです。そして、それが「安全の確立」の第一歩なのです。
次回も、一緒に進んでいきましょう。
メタ情報
カテゴリー: 2. 心理メカニズムカテゴリー
記事番号: 02-08
前の記事: 02-07「アダルトチルドレンとは – 毒親育ちとの関連性」
次の記事: 03-01「『親の問題』と『自分の問題』を分ける方法」(問題の切り分けカテゴリー)
キーワード: トラウマ、PTSD、複雑性トラウマ、トラウマインフォームドケア、EMDR、ソマティック・エクスペリエンシング、心的外傷後成長、回復の3段階、安全の確立
参考文献・エビデンス:
- American Psychiatric Association (2013). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (5th ed.) (DSM-5). Arlington, VA: American Psychiatric Publishing.
- トラウマとPTSDの診断基準。現代精神医学の標準的定義
- Herman, J. L. (1992). Trauma and Recovery: The Aftermath of Violence–From Domestic Abuse to Political Terror. Basic Books.
- 複雑性PTSDの概念を提唱。トラウマ回復の3段階モデルを確立
- van der Kolk, B. A. (2014). The Body Keeps the Score: Brain, Mind, and Body in the Healing of Trauma. Penguin Books.
- トラウマの神経科学的理解。「身体がトラウマを記録する」概念の提唱
- Felitti, V. J., Anda, R. F., Nordenberg, D., Williamson, D. F., Spitz, A. M., Edwards, V., Koss, M. P., & Marks, J. S. (1998). “Relationship of childhood abuse and household dysfunction to many of the leading causes of death in adults: The Adverse Childhood Experiences (ACE) Study.” American Journal of Preventive Medicine, 14(4), 245-258.
- 小児期逆境体験(ACEs)と成人後の健康問題の関連を実証した画期的研究
- Shapiro, F. (2018). Eye Movement Desensitization and Reprocessing (EMDR) Therapy: Basic Principles, Protocols, and Procedures (3rd ed.). Guilford Press.
- EMDR療法の標準的テキスト。トラウマ治療の実証的技法
- Levine, P. A. (2010). In an Unspoken Voice: How the Body Releases Trauma and Restores Goodness. North Atlantic Books.
- ソマティック・エクスペリエンシング(SE)の理論と実践
- Substance Abuse and Mental Health Services Administration (SAMHSA) (2014). SAMHSA’s Concept of Trauma and Guidance for a Trauma-Informed Approach. HHS Publication No. (SMA) 14-4884.
- トラウマインフォームドケアの原則と実践ガイドライン。公的機関による標準
- Courtois, C. A., & Ford, J. D. (Eds.) (2009). Treating Complex Traumatic Stress Disorders: An Evidence-Based Guide. Guilford Press.
- 複雑性トラウマの治療に関する包括的エビデンスレビュー
- Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G. (2004). “Posttraumatic Growth: Conceptual Foundations and Empirical Evidence.” Psychological Inquiry, 15(1), 1-18.
- 心的外傷後成長(PTG)の概念的基盤と実証研究
- Cohen, J. A., Mannarino, A. P., & Deblinger, E. (2017). Treating Trauma and Traumatic Grief in Children and Adolescents (2nd ed.). Guilford Press.
- トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)の標準的テキスト
- Schwartz, R. C. (2021). No Bad Parts: Healing Trauma and Restoring Wholeness with the Internal Family Systems Model. Sounds True.
- 内的家族システム療法(IFS)の最新理論と実践
- Porges, S. W. (2011). The Polyvagal Theory: Neurophysiological Foundations of Emotions, Attachment, Communication, and Self-regulation. W.W. Norton & Company.
- ポリヴェーガル理論。トラウマと自律神経系の関連
文字数: 約13,500文字
執筆日: 2024年
編集者ノート:
この記事は、心理メカニズムカテゴリーの総括記事として、理解から実践への橋渡しを意図しています。
主な構成の特徴:
- トラウマの誤解を解くことに重点を置いた(特に「向き合う」の意味)
- 回復の3段階モデルを明確に提示し、第1段階(安全の確立)の重要性を強調
- 専門家への適切な誘導を含め、「一人で抱え込まない」メッセージを繰り返した
- PTGの概念で希望を示しつつ、「全員が経験するわけではない」とバランスを取った
- 次カテゴリー(問題の切り分け)への自然な橋渡しを行った
既存記事との整合性:
- 02-01の「脳への影響」と一貫性を保った
- 02-02の「潜在意識への刷り込み」をトラウマの形成として説明
- 02-03の「扁桃体の過敏化」を具体的症状として提示
- 02-04の「生きづらさ」がトラウマ症状であることを明示
センシティブな内容への配慮:
- 具体的な虐待描写を避けた
- 「向き合う=思い出す」という誤解を丁寧に解いた
- 専門家の重要性を強調し、無責任な自己治療を推奨しなかった
- 希望のメッセージで終わることを重視した
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