「トラウマ」という言葉を聞いて、どう感じますか。
「私の経験は、そこまで大きなものじゃない」
「トラウマっていうのは、もっと深刻な人のこと」
「向き合うって言われても、どうすればいいか分からない」
あるいは、こんな不安を感じていませんか。
「向き合ったら、もっと辛くなるんじゃないか」
「過去を掘り返すのは怖い」
「今のままでいた方が、まだマシかもしれない」
この記事では、トラウマとは何か、そして「向き合う」とは本当にどういうことなのかを、一緒に考えていきます。
多くの誤解があります。「向き合う」とは、過去を詳細に思い出すことでも、親を許すことでも、一気に解決することでもありません。
そして、最も大切なこと——あなたの経験は「トラウマ」と呼ぶに値するものです。
トラウマとは何か – 正確な理解

「大きな出来事」だけがトラウマではない
トラウマと聞くと、「戦争」「大事故」「性的暴行」といった深刻な出来事を想像するかもしれません。
しかし、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)では、「繰り返し」「継続的」な曝露もトラウマとして定義しています。
子供にとって、親からの否定的な言葉、無視、過度なコントロール、不安定な家庭環境——これらすべてが、心理的な生命の危機として体験されるのです。
複雑性トラウマ——長期間の繰り返しが脳に刻む傷
精神科医ジュディス・ハーマンは、一度の大きな出来事ではなく、
長期間にわたる繰り返しのトラウマを「複雑性PTSD」と名付けました。
特に、逃げることができない家庭で起きるトラウマは、より深刻な影響を及ぼします。
毎日、親の顔色を伺う。毎日、否定される。毎日、怯えながら生きる——これが何年も続いたとき、それは確実にトラウマとなります。
「幼少期の人格形成と毒親の影響」でお話ししたように、この時期の脳は「濡れた粘土」のように柔らかく、繰り返される経験がそのまま深く刻まれていくのです。
小児期逆境体験(ACEs)研究が示す科学的証拠
1998年、フェリッティ博士らの画期的な研究が、17,000人以上を対象に行われました。
結果は明確でした。子供時代の「小さな」傷の積み重ねが、成人後の心身の健康に深刻な影響を与えることが、科学的に証明されたのです。
あなたの経験は、「大したことない」ものではありません。
トラウマは「記憶」ではなく「身体の反応」
神経科学者ベッセル・ヴァン・デア・コークは重要な指摘をしています。
トラウマは、「思い出」として脳に保存されるのではなく、
「身体の反応」として刻み込まれる
通常の記憶は時間が経てば薄れます。しかしトラウマは違います。扁桃体(脳の危険察知センター)に直接刻み込まれ、似た状況で自動的に身体反応を引き起こすのです。
だから、「もう昔のことなのに」「頭では分かっているのに」——身体が勝手に反応してしまう。これは弱さではなく、トラウマの生理学的なメカニズムなのです。
💡 なぜ「頭では分かっているのに変われない」のか、そのメカニズムは「顕在意識と潜在意識 – なぜ気づきにくいのか」で詳しく説明しています。
あなたが感じている「これ」がトラウマの表れ
「自分の経験は大したことない」と思っていた方も、
実は日常的にトラウマの症状を経験している可能性があります。
身体症状 – 体が記憶している
原因不明の身体の不調
- 慢性的な頭痛、肩こり、腰痛
- 胃腸の不調(過敏性腸症候群など)
- 原因不明の疲労感
- 睡眠障害
過敏な身体反応
- 大きな音にびくっとする
- 突然触られると飛び上がる
- 心臓がドキドキして止まらない
これらは、「幼少期の人格形成と毒親の影響」で説明した「扁桃体の過敏化」の結果です。あなたの身体は、常に「危険モード」になっているのです。
【Aさん(32歳・女性)の場合】
病院で検査しても、異常なしと言われます。でも、毎朝起きると体が重くて、動けません。頭痛もひどい。『気のせいじゃないの』と言われることもあります。でも、気のせいじゃないんです。本当に辛いんです」
Aさんの症状は、幼少期から続く慢性的なストレスによるものでした。家では常に緊張していた。親の機嫌を伺い、怒られないように気をつけていた。その状態が20年以上続いた結果、身体が悲鳴を上げているのです。
心理症状 – 心が記憶している
侵入的な記憶(フラッシュバック)
フラッシュバックは、映画のように鮮明に蘇ることだけではありません。
多くの場合はもっと微細です。
- ふとした瞬間に、親の怒った顔が浮かぶ
- 親の声のトーンが頭の中で聞こえる
- 子供の頃の感覚(恐怖、無力感)が急に湧いてくる
過覚醒 – 常に警戒している
- 人の顔色を常に伺ってしまう
- 些細なことでも「何か悪いことが起きるのでは」と不安になる
- リラックスできない
「毒親に育てられると生きづらさを感じる理由」でお話しした「3倍のエネルギー消費」——これも、過覚醒の結果です。あなたの脳は、常に戦闘態勢なのです。
回避行動と感情の麻痺
- 実家に帰るのを避ける
- 親からの連絡を見たくない
- 喜びも悲しみも、あまり感じない
- 「今、何を感じているか」と聞かれても分からない
これらは防衛機制です。
辛い記憶や感情から自分を守るために、無意識に避けているのです。
💡 感情が感じられなくなる仕組みについては、
「潜在意識に刷り込まれる幼少期の傷」で詳しく解説しています。
【Bさん(29歳・男性)の場合】
友達が結婚して、すごく幸せそうです。でも、僕は何も感じません。嬉しいはずなのに。悲しいこともあったけど、涙も出ない。感情がないみたいです
Bさんは、幼少期から感情を抑圧することで生き延びてきました。
親に感情を出すと否定されたからです。
その結果、大人になった今も、感情にアクセスできなくなっているのです。
対人関係の症状 – 関係が記憶している
- 人と深い関係を築けない
- 誰も信用できない
- NOと言えない
- 相手の問題を自分の問題として抱え込む
これらは、「毒親育ちの恋愛・人間関係のパターン」で述べた「愛着スタイル」の問題です。親との関係で形成された対人関係のパターンが、今も続いているのです。
もしあなたが、これらの症状を複数経験しているなら——それは、トラウマの影響なのです。
あなたの身体と心は、過去の傷を記憶しているのです。
「向き合う」の誤解を解く
ここで、最も大切なことをお伝えします。
「向き合う」ことについて、多くの誤解があります。
その誤解を解くことが、回復への第一歩なのです。
よくある誤解
誤解1: 「過去を詳細に思い出さなければならない」
真実: 思い出すことが目的ではない。安全に感じられることが目的
トラウマ治療の第一人者ベッセル・ヴァン・デア・コークは、こう述べています。
「トラウマの治療は、過去を変えることではない。過去との関係を変えることだ」
つまり、詳細に思い出す必要はないのです。むしろ、無理に思い出そうとすることは、トラウマの再体験を引き起こし、逆効果になることもあります。
誤解2: 「親を許さなければならない」
真実: 許しは必須ではない。自分を解放することが目的
許すかどうかは、あなたが決めることです。許せないなら、許さなくていい。
重要なのは、親への怒りや恨みに支配されないことです。
「親を許さないと、自分が前に進めない」
これも誤解です。親を許さなくても、あなたは前に進めます。
💡 「謝る親でも毒親?コントロールの見抜き方」では、「許さなければならない」というプレッシャーから自由になる方法を解説しています。
誤解3: 「すべてを語らなければならない」
真実: 語りたいことだけでいい。沈黙も尊重される
トラウマインフォームドケアの原則の一つは、「選択とコントロール」です。
あなたが話したくないことは、話さなくていい。
専門家は、あなたを無理に話させようとはしません。あなたのペースを尊重します。
誤解4: 「向き合えば一気に解決する」
真実: プロセスには時間がかかる。それが正常
トラウマの回復は、一直線には進みません。良くなったり、悪くなったり。
2歩進んで1歩下がる。それが普通のプロセスなのです。
ジュディス・ハーマンは、トラウマ回復には「数ヶ月から数年」かかると述べています。焦らないでください。
「向き合う」の本当の意味
では、「向き合う」とは、本当にどういうことなのでしょうか。
1. 気づくこと
「これがトラウマの影響だ」と認識する。気づくだけで、自分を責めなくなります。
「私が変なんじゃなかった。理由があったんだ」——そう理解できるのです。
2. 安全を確保すること
今、あなたは安全であることを確認する。トラウマ回復の第一段階は、「安全の確立」です。安全が確保されていない状態で、トラウマと向き合うことはできません。
3. 感情を許可すること
怒ってもいい。泣いてもいい。怖がってもいい。
感情は自然なものです。感じることを、自分に許可してください。
4. 新しい経験を積むこと
トラウマは、「人は危険だ」という信念を作ります。
その信念を変えるには、安全な関係を実際に経験することが必要です。
これは、頭で理解するのではなく、身体で経験することが重要なのです。
回復のプロセス – 3つの段階
ジュディス・ハーマンは、トラウマ回復を3つの段階に分けました。
重要なのは、これらの段階を順番に進む必要があるということです。
特に、第1段階の「安全の確立」は絶対に必要なのです。
第1段階: 安全の確立

これが、最も重要な段階です。安全がなければ、回復は始まりません。
トラウマを負った人の脳は、常に「危険モード」になっています。この状態では、過去と向き合うことはできません。まず、「今、私は安全だ」と脳に教える必要があるのです。
安全の4つの側面
1. 物理的安全
危険な状況から離れる。親と適切な距離を取る(必要なら疎遠・絶縁)。
安全な住環境を確保する。
まだ親と同居している、または頻繁に接触しているなら、
まずそこから変える必要があります。
「でも、親を見捨てられない」「親が可哀想」——そう思うかもしれません。
でも、あなたの安全が最優先です。
💡 親との距離の取り方については、後のカテゴリー「距離を置く選択肢 – 疎遠・絶縁・限定接触とタイミング」で詳しく学んでいきます。
2. 心理的安全
自分を責めない。「自分が悪かった」という思い込みを手放す。
トラウマ反応を「異常」ではなく「正常な反応」として受け入れる。
3. 関係的安全
信頼できる人を見つける。サポートシステムを構築する。
共感的な友人、カウンセラー、支援グループ。
一人で抱え込まないでください。
トラウマからの回復には、安全な人間関係が不可欠です。
4. 身体的安全
基本的なセルフケア(睡眠、食事、運動)。身体のシグナルに注意を払う。
トラウマを負った人は、しばしば身体のケアを怠ります。
「自分は大切にされる価値がない」と思い込んでいるからです。
でも、あなたの身体は、ずっとあなたを支えてきました。
その身体を、大切にしてください。
💡 身体的安全を確保する具体的な方法については、後のカテゴリー「ストレスマネジメントの技法」で詳しく解説します。
この段階だけで、数ヶ月から1年以上かかることもあります。焦らないでください。安全を確立することが、すべての基盤なのです。
第2段階: 記憶と喪失の受容

安全が確立されたら、次の段階に進みます。
ここで初めて、過去の経験と向き合うのです。
何が起きたのか、整理する
トラウマ記憶は、断片化しています。時系列がバラバラだったり、詳細が曖昧だったり。
この段階では、その断片を少しずつ統合していきます。ストーリーとして整理することで、記憶は「過去の出来事」として脳に保存され直されます。
失われたものを悼む
あなたは、多くのものを失いました。普通の子供時代。無条件の愛情。安全感。自己肯定感。
💡 自己肯定感がどのように失われたかについては、「自己肯定感が低くなるメカニズム」で詳しく説明しています。
これらは、取り戻せません。過去は変えられないのです。その喪失を、悼んでください。悲しんでください。怒ってください。
重要な注意
この段階は、専門家のサポートがあった方が安全です。
一人で無理に進める必要はありません。トラウマの再体験にならないよう、慎重に。
EMDR、ソマティック・エクスペリエンシング、トラウマフォーカスト認知行動療法——こうした専門的な技法があります。
第3段階: 人生との再接続
最後の段階——ここで、あなたは新しい人生を築き始めます。
- 新しい人間関係を築く
- 自分の価値観を見つける
- 人生の意味を再構築する
- 未来に希望を持つ
「過去は変えられない。でも、未来は自分で創れる」
この実感が、回復の最終段階なのです。
「治る」のではなく「成長する」
「じゃあ、トラウマは『治る』のか?」
この問いに対する答えは——「治る」という表現は適切ではないのです。
トラウマは、病気ではありません。それは、過酷な状況に対する正常な反応です。
だから、「治す」という表現よりも、「回復する」「成長する」という表現の方が適切なのです。
心的外傷後成長(PTG)という希望
心理学者テデスキとカルホーンは、
「心的外傷後成長(Post-Traumatic Growth: PTG)」という概念を提唱しました。
これは、トラウマ体験の後に、むしろ以前よりも成長するという現象です。
「トラウマのおかげで良かった」という意味ではありません。
トラウマは決して「良いこと」ではありません。
でも、トラウマを経験し、それと向き合うプロセスを通じて、
人は成長することができる——それが、PTGの考え方なのです。
PTGの5つの領域
- 人間関係の深まり – 人の痛みが分かるようになった
- 新しい可能性の発見 – 「こんな生き方もあるんだ」と新しい道を見つけた
- 人生に対する感謝 – 小さな幸せに気づけるようになった
- 精神的な成長 – 何が本当に大切か、分かるようになった
- 内面的な強さ – 「あれを乗り越えた自分なら、これも乗り越えられる」
【Dさん(33歳・女性)の場合】
完全に『治った』わけではありません。
今でも、突然の足音にはドキッとすることがあります。
でも、変わったことがあります。
以前は、『こんな反応をする自分はおかしい』と思っていました。
今は、『ああ、身体が反応しているな』と客観的に見られるようになりました。
そして、人の痛みが分かるようになりました。
同じように苦しんでいる人を見ると、放っておけません。
『もしかしたら、この経験は無駄じゃなかったのかも』——最近、そう思えるようになってきました」
トラウマから回復するとは、「なかったことにする」ことではありません。
経験を統合し、その上で新しい自分を築くことなのです。
ただし、重要な注意があります。すべてのトラウマ体験者がPTGを経験するわけではありません。PTGを経験しなくても、それは「回復していない」という意味ではありません。
回復の形は、人それぞれです。あなたのペースで、あなたの形で——それでいいのです。
サポートを得る – 一人で抱え込まない
トラウマからの回復には、サポートが必要です。それは必ずしも専門家である必要はありません。
なぜサポートが必要なのか
トラウマは、孤立の中で深まります。「誰にも言えない」「誰も分かってくれない」——その孤独が、傷をさらに深くするのです。
逆に、安全な人とのつながりは、回復の力になります。
サポートには、様々な形があります:
- 専門家のサポート(カウンセラー、心理士、精神科医)
- 同じ経験をした仲間のサポート(自助グループ、ピアサポート)
- 信頼できる友人のサポート
- 理解ある家族のサポート(親以外の親族など)
どの形が良いかは、人それぞれです。複数のサポートを組み合わせることも有効です。
専門家のサポート
深刻なトラウマ症状がある場合は、専門家のサポートが特に重要です。
専門家にできること:
- 安全にトラウマ記憶を扱う技法を持っている
- 客観的な視点でパターンを指摘してくれる
- 科学的に効果が実証された技法を提供できる
トラウマ治療の主な技法:
- EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)
- ソマティック・エクスペリエンシング(SE)
- トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)
- 内的家族システム療法(IFS)
💡 専門家の選び方や見つけ方については、後のカテゴリー「カウンセリングの選び方と活用法」で詳しく解説します。
同じ経験をした仲間のサポート
同じ経験をした人々——特に、機能不全家族で育ち、自分の感情と向き合い、トラウマを乗り越えた人、またはうまく付き合えるようになった人は、強力なサポート源です。
なぜ仲間のサポートが力になるのか:
- 「分かってもらえる」という実感 – 説明しなくても分かってくれる
- 「回復は可能だ」という希望 – 同じ経験をした人の回復は、生きた希望
- 実践的なアドバイス – 「こうしたら楽になった」という具体的な知恵
- 安全な「実験場」 – 健全な人間関係を経験する場
注意点:
- 共依存にならない
- 「傷の舐め合い」にならない
- 深刻な症状がある場合は、専門家のサポートも併用する
信頼できる友人のサポート
本当に気を許せる友人も、重要なサポート源になります。
どんな友人がサポートになるか:
- 評価せずに聞いてくれる
- 秘密を守ってくれる
- 境界線を尊重してくれる
- アドバイスを押し付けない
- 自分の問題と区別できる
【Eさん(31歳・女性)の場合】
長年の友人に、初めて親のことを話しました。すごく怖かったです。『変だと思われるんじゃないか』『引かれるんじゃないか』と。でも、友人は静かに聞いてくれました。評価せず、ただ聞いてくれました。そして最後に、『話してくれてありがとう。辛かったね』と言ってくれました。それだけで、心が軽くなりました。専門家のカウンセリングも受けていますが、日常的に話を聞いてくれる友人の存在は、本当に大きいです
複数のサポート源を持つ
理想的なのは、複数のサポート源を持つことです。
- 専門家:深いトラウマの処理、専門的な技法
- 仲間:共感、実践的なアドバイス、希望
- 友人:日常的な支え、楽しい時間の共有
それぞれに役割があり、組み合わせることで、より安定した回復が可能になります。一つのサポート源に依存しすぎないことも、健全な関係を保つために重要です。
「助けを求める」ことは強さの証
最後に、もう一度お伝えします。
助けを求めることは、弱さではありません。
それは、自分を大切にするという選択です。自分の回復を真剣に考えているという証です。
「一人で何とかしなきゃ」——その思い込みを、手放してください。
専門家でも、仲間でも、友人でも——あなたは、助けを求めていいのです。
まとめ
トラウマとは
- 「大きな出来事」だけがトラウマではない
- 繰り返しの「小さな」傷もトラウマになる(複雑性トラウマ)
- トラウマは「記憶」ではなく「身体の反応」として刻まれる
「向き合う」の誤解を解く
❌ 誤解:
- 過去を詳細に思い出さなければならない
- 親を許さなければならない
- すべてを語らなければならない
- 向き合えば一気に解決する
⭕ 真実:
- 安全に感じられることが目的
- 許しは必須ではない
- 語りたいことだけでいい
- プロセスには時間がかかる
回復の3つの段階
第1段階: 安全の確立 – 物理的、心理的、関係的、身体的安全を確保。この段階が最も重要
第2段階: 記憶と喪失の受容 – 何が起きたのか整理する。失われたものを悼む
第3段階: 人生との再接続 – 新しい人間関係を築く。自分の価値観を見つける
「治る」より「成長する」
- トラウマは「病気」ではない
- 「元に戻る」のではなく「前に進む」
- 心的外傷後成長(PTG)という希望がある
- 回復の形は人それぞれ
サポートを得る
- 一人で抱え込まない
- サポートには様々な形がある(専門家、仲間、友人)
- 複数のサポート源を組み合わせることが効果的
- 助けを求めることは強さの証
あなたへのメッセージ
トラウマと向き合うことは、勇気のいることです。
読んでいて、辛くなったかもしれません。「自分には無理だ」と思ったかもしれません。
でも、覚えておいてください。
あなたは、すでに最も困難なことを乗り越えてきました。
子供の頃、あの家で生き延びたこと——それが、何よりの証です。
あの時のあなたは、持てる力のすべてを使って、生き延びました。その強さは、今もあなたの中にあります。
そして今、あなたには選択肢があります。あの時はなかった、「助けを求める」という選択肢が。
一人で抱え込まなくていい。専門家の力を借りていい。仲間を見つけていい。
あなたは一人ではありません。
トラウマと向き合う道は、険しいかもしれません。でも、その先には——
新しい自分。新しい人生。新しい可能性。
それらが、待っています。
焦らなくていい。あなたのペースで。一歩ずつ。
あなたは、回復する力を持っています。
そのことを、信じてください。
次回予告
今回、トラウマと向き合うことについて学びました。特に重要だったのは、回復の第1段階である「安全の確立」でした。
では、この「安全の確立」を、具体的にどう実践すればいいのでしょうか。
次回からは、「カテゴリー3:愛着障害・愛着スタイル」に入ります。
最初の記事は、「愛着障害とは?毒親育ちとの関係を整理する」です。
- トラウマと愛着の関係
- なぜ人間関係で不安が暴れるのか
- 愛着スタイルという視点で自分を理解する
- 愛着の傷つきは修正できるのか
これらについて、詳しく学んでいきます。
人間関係の難しさには、理由があります。そして、新しいパターンを学ぶことは可能です。
次回も、一緒に進んでいきましょう。
メタ情報
参考文献・エビデンス:
- アメリカ精神医学会 (2013). 『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』
- トラウマとPTSDの診断基準。現代精神医学の標準的定義
- ジュディス・ハーマン (1992). 『心的外傷と回復』中井久夫訳、みすず書房
- 複雑性PTSDの概念を提唱。トラウマ回復の3段階モデルを確立した古典的名著
- ベッセル・ヴァン・デア・コーク (2016). 『身体はトラウマを記録する——脳・心・体のつながりと回復のための手法』柴田裕之訳、紀伊國屋書店
- トラウマの神経科学的理解。「身体がトラウマを記録する」概念の提唱
- フェリッティ他 (1998). 「小児期逆境体験と成人後の主要死因との関係:ACEs研究」『アメリカ予防医学ジャーナル』14(4), 245-258
- 小児期逆境体験(ACEs)と成人後の健康問題の関連を実証した画期的研究
- フランシーン・シャピロ (2018). 『EMDR療法:基本原理、プロトコル、手順(第3版)』
- EMDR療法の標準的テキスト。トラウマ治療の実証的技法
- ピーター・ラヴィーン (2010). 『心と体をつなぐトラウマ・セラピー』
- ソマティック・エクスペリエンシング(SE)の理論と実践
- アメリカ薬物乱用・精神衛生管理庁(SAMHSA) (2014). 『トラウマの概念とトラウマインフォームド・アプローチのためのガイダンス』
- トラウマインフォームドケアの原則と実践ガイドライン。公的機関による標準
- コートワ&フォード編 (2009). 『複雑性トラウマティック・ストレス障害の治療:エビデンスに基づくガイド』
- 複雑性トラウマの治療に関する包括的エビデンスレビュー
- テデスキ&カルホーン (2004). 「心的外傷後成長:概念的基盤と実証的証拠」『サイコロジカル・インクワイアリー』15(1), 1-18
- 心的外傷後成長(PTG)の概念的基盤と実証研究
- コーエン、マナリーノ&デブリンガー (2017). 『子どもと青年のトラウマとトラウマティック・グリーフの治療(第2版)』
- トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)の標準的テキスト
- リチャード・シュワルツ (2021). 『悪い部分はない:内的家族システムモデルによるトラウマの癒しと全体性の回復』
- 内的家族システム療法(IFS)の最新理論と実践
- スティーブン・ポージェス (2011). 『ポリヴェーガル理論:感情、愛着、コミュニケーション、自己調整の神経生理学的基盤』
- ポリヴェーガル理論。トラウマと自律神経系の関連
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